美容師国家試験の第2課題がオールウェーブセッティングと発表されました。学生の皆さんは、これから美容国家試験に向けての練習も本格化していきますよね。美容師国家試験にみんな合格するといいんですが、試験である以上合格者も出れば不合格者も出るのも事実。そこで今回は、美容師国家試験について傾向と対策を解説していきたいと思います。

美容師国家試験とは

美容師国家試験とは美容師法に規定されている美容専門学校を卒業（予定）した人が受けることのできる国家試験です。世の中には約1,200以上の資格があると言われており、その中での国家資格は300もありません。それくらい、国の定めた国家資格は価値のある資格だと言えます。

第42回美容師国家試験の合格率

美容師国家試験の合格率って、どのくらいあるのでしょうか。理容師美容師試験研修センターの調べによると冬の試験では約85％、夏の試験では約58％ということがわかりました。この結果を見て「夏と冬で美容師国家試験の合格率が全然違うな」と思いますよね。

この理由は、冬の美容師国家試験を受ける生徒が「一般生」で、夏の美容師国家試験を受けるのが「通信生」だからです。一般生と通信生の違いについて説明をします。

美容師国家試験を受験する一般生

美容師国家試験を受験する一般生の場合は、美容専門学校を2年間（1,400時間以上）通います。基本的に土日が休みで平日は毎日ように通うので、みっちり学習ができ、美容師国家試験に向けて万全の準備ができます。

美容専門学校は、美容師国家試験が近づいてきたら朝から夜まで練習したりと、かなり追い込みをかけます。そのため、一般生が受験する「冬の美容師国家試験」では高い合格率を誇り、ほとんどの生徒が合格するわけです。

美容師国家試験を受験する通信生

美容師国家試験を受験する通信生の場合は、3年間（600時間以上）学校に通うことになります。通信生は、基本的に美容室に勤務している状態でないと美容学校に入学することができません。つまり「美容室と美容学生の二足のわらじ」になるわけです。

授業時間が一般生と比較して600時間と「半分以下」なので、一般生のようにみっちり授業を受けることができないのもネック。授業時間が少なく仕事と両立しないといけないため、通信生が多く受験する夏は合格率が冬に比べて下がります。

美容師国家試験の内容

美容師国家試験とは、筆記と実技の2つの項目に分かれて審査されます。実技に関しては、カッティングの他にワインディングとオールウェーブセッティングの2種類。カッティングは毎回、同じレイヤースタイルですが第2課題は、ワインディングとオールウェーブセッティングのどちらかが出題されるような形です。

この筆記と実技の両方をパスして、やっと美容師免許が取得されるようになっています。

筆記試験

筆記試験では、

• 関係法規・制度
• 衛生管理
• 保険
• 香商品科学
• 文化論
• 理容美容技術論
• 運営管理

の7つに分類されています（文化論と運営管理は2019年から新しく追加）。正解率としては、50問中60％以上でないと筆記試験の合格になりません。

さらに、

• 関係法規・制度
• 公衆衛生・環境衛生
• 感染症
• 衛生管理技術
• 人体の構造及び機能
• 皮膚科学
• 美容物理化学
• 美容理論

の項目で無得点があってもダメです。

各項目の内容を全て書いていたら、膨大な量になってしまうので簡単にひとつずつ説明をしていきます。詳しい内容が知りたい方は、美容師国家試験研修センターの公式ページに飛んでみてください。

参考：公益財団法人 理容師美容師試験研修センター

関係法規・制度

美容師国家試験の関係法規・制度では美容室を開業するまでの手順などが問われます。保健所への申請、管理美容師の資格取得の仕方などが学べる内容です。

衛生管理

美容師国家試験の衛生管理では、美容室を清潔に保つための知識を問われます。感染病についての知識や日本における死因の割合なども覚えておかなければなりません。がん、心臓病、生活習慣病など私たちの身の回りでも実際に起き得ることが学べます。

保険

美容師国家試験の保険では、皮膚科学や人体の構造及び機能について問われます。人体の部位であったり、骨や筋肉の種類などを覚えなければなりません。屈筋、伸筋、外転筋など普段だと聞き慣れない専門用語が多く出ます。さらに、神経についても出題されるので各部位についての暗記が必要です。

香粧品科学

美容師国家試験の香粧品科学では、美容に関する知識が問われます。シャンプーの成分やスキンケアで使用する成分などを細かく理解しなければなりません。シャンプーの洗浄成分の種類にもある界面活性剤など「聞いたことはあるけど、詳しくは知らないな？」って人も多いのではないでしょうか。

その他に医薬品と医薬部外品についても学んでいきます。例えると、美容師がカラーやパーマの施術で日常的に使用する染毛剤やパーマネントウェーブ剤などが医薬部外品のひとつです。

文化論

美容師国家試験の文化論では、美容師のルーツについて問われます。現代の美容業のあり方についてや、歴史を遡って縄文時代や弥生時代の美容業についても学ばなければなりません。西洋のファッション文化についても古代エジプトまで遡って勉強するので美容業の歴史を知ることができます。

まさに、美容業の日本史と世界史です。

理容技術理論（美容技術理論）

美容師国家試験の美容技術理論では、美容師の技術についての名称などが問われます。例えば、頭皮のスキャルプマッサージだけでも軽擦法、強擦法、揉撚法、振動法、圧迫法、叩打法など6種類あります。

さらに、この中の叩打法の種類でタッピング、スラッピング、カッピング、ハッキング、ビーティングの6種類あるのでマッサージだけでも頭がごちゃごちゃになる可能性も…。

普段、何気なくやっていること一つひとつに名称があるので、通信制はサロンワーク中に自分が何をしているか意識すると名称が頭と体に染み込んできます。

運営管理

美容師国家試験の運営管理では、美容室を開業して運営していくための税金、経営、保険などについて問われます。美容室を運営していくには、経理や確定申告などお金の仕組みを知っておかないといけません。

事業主に雇われているときは、税金関係などは会社がしてくれるのですが、開業となると自己管理です。経営に困ったときの給付金についても学べるので、しっかりと勉強をしておきましょう。

筆記試験の学習法とポイント

美容師国家試験の筆記試験の学習法とポイントについて解説していきます。

筆記試験で最も効率の良い学習法は「授業で覚える」ことです。当たり前のことですが、ほとんどの人ができていないのが現状。授業を疎かにして筆記試験の勉強をしないと確実に試験に合格する確率が下がります。その理由は、「実技試験との兼ね合い」が大変だからです。

筆記試験と実技試験の両立は難しい？

美容師国家試験が近づいてから筆記試験を追い込んでやろうとすると失敗します。それは、美容師国家試験は「圧倒的に実技試験に費やす時間が多い」からです。

美容師国家試験は、先に実技試験があって1ヶ月後に筆記試験という日程。そのため、多くの生徒が最初に授業がある実技試験の練習に時間を費やします。美容師国家試験の実技練習は授業が終わっても放課後の居残り練習したりするので、とてもじゃないですけど筆記試験との勉強の両立は難しいです。

実技練習をするあまり、筆記試験の勉強を疎かにして美容師国家試験でボロボロになる人が多い傾向があります。実技練習の時間を確保するためにも、筆記試験は授業でしっかりと覚えておくことが大事。

美容師国家試験の過去の筆記試験問題

美容師国家試験での勉強法は、ひたすら過去の筆記問題を解くことに限ります。授業であらかたの内容は、覚えていると思うので過去の筆記問題を解きましょう。美容師国家試験の筆記試験に関しては「どれだけ問題を解いたか？」が全て。効率なんて関係ありません。

国家試験前の追い込みになれば実技練習を遅くまでやっているので疲れもピーク。実技練習と比較して筆記勉強は、睡魔との戦いになりやすく集中することも難しいです。ただし、最近では学校側が過去の筆記問題の勉強をすることができるスマホアプリを提供していしています。

隙間時間を見つけて過去問題を解くようにしましょう。

iPhoneアプリDL

AndroidアプリDL

参考：リビッツステーション

衛生実技試験

美容国家試験の衛生実技試験は以下の3つのことがチェックされます。

当たり前のことを当たり前にすれば、衛生実技試験はクリアできる内容です。しかし、実技試験に集中しすぎてうっかりミスが多いので、毎年必ず美容師国家試験の衛生で失格になる人が出ます。

モデルウィッグ審査

美容師国家試験で使用するモデルウィッグ審査です。

気をつけてないといけないのがモデルウィッグの汚れ。美容師国家試験で使用するモデルウィッグの顔に、明らかな汚れが付いていると減点対象になります。理由として、衛生面の他に汚れがあると、それが目印と思われることが原因。目印があると受験者がどのウィッグを使って実技試験を受けたか特定できるからです。

普段の練習から顔などに汚れが付かないように気をつけましょう。特にモデルウィッグの顔は、ゴム繊維でできているのでマジック汚れが付くと落ちません。モデルウィッグを美容バックに入れる場合は、タオルなどで包んで入れましょう。バックにペンなどが入っていたら付着する恐れがあります。

意外と忘れやすいのが「美容師国家試験標準仕様適合シール」を貼り忘れるケース。シールを貼っていないウィッグは美容師国家試験では使用できません。忘れないようにチェックしておきましょう。

身体及び服装等の審査

美容師国家試験での身体及び服装では「清潔で作業をしやすく、衛生面に配慮されたもの」と言う指示があります。色の指定などはないのですが、白衣を着用するのがベストでしょう。白衣の中に着るシャツも白い物を着用したほうがいいです。

ズボンの指定もありませんが、白ではなく黒いスキニーパンツがおすすめ。白衣は試験会場に到着して着用すると思います。しかし、ズボンの場合だと会場で着替えず履いた状態で試験会場に向かう人がほとんどです。

もし、白いズボンを履いて会場へ向かう途中に汚れてしまったら減点対象になってしまいます。その点、黒いズボンだと不注意で汚れてもシミなどが目立ちません。白衣と黒のズボンがいちばん良い組み合わせだと思います。

靴も白か黒の色がおすすめですが、汚れの目立たない黒を選んだほうがズボンと同じ理由で良いです。

受験者の髪型も、目に髪が被っていたり、清潔感のない髪型だったりすると減点されます。髪の長い女性は、髪を結んで前髪はピンで留めるようにしましょう。腕時計や指輪などもダメで、ヘアカラーに関しても黒髪が望ましいです。

とにかく、試験官から少しでも「不衛生」と思われたら終わりなので、意識しすぎるくらいでちょうど良いと思います。

用具類の審査

美容師国家試験で仕様する用具類は、使用前、使用中、消毒済、汚物入れなどのシールを貼っておかないダメです。使用する用具によって、貼るシールが違うので気をつけるようにしましょう。

除菌用ウエットティッシュには、消毒薬というシールの他に「エタノール成分」が含まれていないといけません。除菌用ウエットティッシュを買うときは、エタノールの成分が配合されているかの確認が必要です。

用具類に関しては、持っていく物が多いので忘れ物がないように確認をしておきましょう。

試験作業時間中の審査

美容師国家試験の試験作業中の審査では、受験者が使用した用具を適切に処理しているか見られます。

カット、ワインディング、オールウェーブセッティングのやり方は各学校によって多少やり方違うので手順での減点はほとんどないです。基本的には、「仕上がり審査」で見られます。

試験作業中の審査では衛生面を中心に

• 「使用した物を汚物入れに捨てているか？」
• 「テーブルに不要なものが置いてないか？」
• 「モデルウィッグを人と思って丁寧に扱っているか？」

などが見られます。どうしても技術に集中してしまいがちですが、衛生面も作業中に意識しないといけません。

作業終了後の審査

美容師国家試験の技術試験、作業終了後はモデルウィッグ審査に入ります。

顔などにカットした髪や汚れが付着していないかを確認しましょう。特にモデルウィッグの顎の下に髪が付いている場合があるので注意が必要です。あと、モデルウィッグを別に部屋に持っていくことが多いので、運ぶ際は慎重に扱う必要もあります。

美容師実技試験 第1課題カッティング

美容師国家試験の第1課題カッティングではレイヤーカットをします。カッティングに関しては、第2課題と違って毎年必ずレイヤーカットです。制限時間20分以内に仕上げなければなりません。

カッティング試験では、この2つなどが審査されます。

第1課題のカッティングに関しては、ひたすらウィッグを切って覚えるしかありません。ワインディングやオールウェーブと違い、カットウィッグは使い捨てなのでコストが結構かかります。よく1cmずつ切って練習する人もいますが、その練習と合わせて必ず新品のカットウィッグを一気に切る練習もしましょう。

しかし、美容国家試験を受かるための必要経費と思い、たくさん切ることがおすすめです。

美容師実技試験 第2課題

美容国家試験、第2課題はワインディングとオールウェーブセッティングのどちらかが出題されます。どちらかわかるのも3ヶ月前なので両方を練習するしかありません。第2課題が発表されたら、そちらに集中しましょう。

ワインディング

美容師国家試験、第2課題のワインディングは20分以内に仕上げなければなりません。

ワインディングする際に以下のことに注意すると良いです。

ワインディングで最も大事なのが巻き方でもロッドの納め方でもなく「ブロッキング」です。ブロッキングで全て決まると言って良いと思います。なぜなら、ブロッキング通りに巻いていくのでブロッキングがズレていると、その時点で綺麗なワインディングは不可能になるからです。

最初のブロッキングでロッド幅、構成が決まるので意識して練習することをおすすめします。

オールウェーブセッティング

美容師国家試験、第2課題オールウェーブセッティングは25分以内に仕上げなければなりません。

オールウェーブセッティングで意識することは以下のことです。

オールウェーブセッティングはワインディングと違い、主にアメピンのみでカールを形成していきます。

ワインディングだったら、ある程度イメージつきやすいですが、オールウェーブセッティングはほとんどの生徒が全くの初心者からのスタートです。おそらく、最初は何をどうしていいのか「意味不明」だと思います。

だた、コツをつかめばワインディングよりも簡単という人も多い技術です。最初のうちはコツをつかむまで、とにかく練習して慣れるしかありません。

実技試験に合格するための極意

美容師国家試験の実技試験に合格するための極意は簡単です。「練習あるのみ」の一言に尽きます。美容師に限らず、専門職のほとんどが練習するしかありません。

通信課程の生徒は、仕事と学校の両立もあり時間が取りづらいのもわかりますが「時間がない」と言っていたら前にも進まないのも事実です。

第43回の課題“オールウェーブセッティング”のポイント

第43回の課題であるオールウェーブセッティングについてポイントを説明します。

オールウェーブは、スカルプチュアカール、リフトカール、メイポールカール、クロッキノカールなど様々な種類のカールで形成されています。この中でも基本の「スカルプチュアカール」の練習が大事です。

スカルプチュアカールは、「どれだけ薄く」作るかがポイントになってきます。厚みのあるスカルプチュアカールは、綺麗に巻かれていても減点対象です。

審査員がモデルウィッグをチェックするときは、まず正面から見ます。正面を見てからサイド、バックに移るので、正面から見えるスカルプチュアカールは確実にマスターしましょう。正面から見えるスカルプチュアカールが安定してないと全体的なバランスが劣ってしまい、減点対象になってしまうからです。

さらにスカルプチュアカールは一番最初に作るカールなので、オールウェーブを巻き終わった後だと乾いて「割れやすく」なる可能性もあります。基本のスカルプチュアカールをとにかく練習するようにしましょう。

私の知り合いで、50歳で合格した人や育児をしながら合格した人もいます。実技試験を合格するための簡単な道はなく、毎日毎日練習した人が良い結果をつかみ取っています。

美容師国家試験に落ちたら就職にも影響するの？

美容師国家試験に落ちた場合、就職予定の美容室に就職できなくなる可能性もあります。これは、美容室によって判断が違うので一概には言えません。美容師国家試験に落ちても半年後にもう一度あるので、そのときまでに合格すればOKな美容室もあります。

美容師国家試験に落ちたら就職取り消しの美容室は、面接の時点で説明があると思うので、諦めるか、就職先である美容室との要相談です。

美容師国家試験はひとつの通過点

美容師国家試験についてまとめていきます。

先ほども説明をしましたが、国家試験が近くなると実技試験の練習ばかりになってしまい筆記試験の勉強をする時間がなくなります。実技試験の練習に没頭できるように、授業をよく聞いて筆記試験の勉強をしましょう。この記事が少しでも参考になれば、嬉しいです。