インボイス制度は、消費税に関係するもの。フリーランスや業務委託で仕事をする美容師に、かなり影響があります。今もらっている報酬が変わってしまうリスクがあるので、美容室経営者などと、早めに相談しておきましょう。何をするべきかわからない美容師もいるはずなので、詳しくまとめてあります。不安な人ほど早めに参考にしてみてください。
美容師は知っておくべき「インボイス制度」
美容師は仕事が忙しくて、制度について勉強する暇がないかもしれません。
しかし「インボイス制度」に限っては、時間を作ってまで、予め勉強をしておくべきです。
特に現役のフリーランスの美容師にとっては、かなり重要な問題となります。
また、サロン経営をして行く予定の美容師も、頭に入れておいて損はありません。
多くの美容師が関係してくる問題です。
そこでインボイス制度について、簡単にまとめてみました。
概要だけでも知っておくと、重要性が認識できますよ。
ちなみにインボイス制度は、消費税と深く関わった制度です。
消費税の制度についても、知っておかないと理解しにくくなります。
- 消費者
- 事業者
消費税を知る上で必要なのは、この2人の関係性を知っておかないといけません。
消費者とは、事業と関係のないお金を支払う人です。
例えば今日の食事に必要な食材を買ったケース。例えば美容室の経営者なら、仕事とは関係のない買い物なので、消費をしたと扱われます。
この場合、消費者が消費税を含む料金を事業者に支払い、その消費税は事業者が支払います。
消費税の流れ(消費者)
- 消費者がお肉220円(消費税20円)を購入
- 事業者は代金220円(消費税20円)を受け取る
- 事業者は後で消費税20円を税務署に納付
これに対して、美容師が必要なハサミを購入したのなら、それは事業に必要な経費になります。
その場合、事業者はハサミを支払った料金分の消費税から、消費者から受け取った消費税を差し引いて納付ができます。
消費税の流れ(事業者)
- 事業者(美容師)がハサミ22,000円(支払った消費税2,000円)を購入
- 事業者(美容師の)年間売上に対する消費税が112,000円(受け取った消費税)だった
- 112,000円-2,000円=110,000円を税務署に納付
これが消費税の仕組みです。
インボイス制度が始まると、何が変わるのか見てみましょう。
インボイス制度とは
インボイス制度を知るためには、免税事業者について知る必要があります。
免税事業者とは、消費税を納めていない事業者です。
課税売上が1,000万円以下なら、その事業者は免税事業者になれます。
免税事業者は、消費者から受け取った消費税も含めて、そのまま自分のものにできます。
消費税の流れ(免税事業者)
- 消費者がお肉220円(消費税20円)を購入
- 免税事業者は、代金220円(消費税20円)を受け取る
- 免税事業者は消費税分の20円を納付する必要なし
本来は受け取った消費税を支払う必要がありますが、制度上問題ありません。
しかしインボイス制度が始まると、免税事業者は消費税を支払う課税事業者になるべきか判断する必要が出てきます。
特に事業者間の取引がある場合です。
消費税の流れ(免税事業者・インボイス制度あり)
- 免税事業者からお肉を110円(消費税10円)で業者から仕入れ
- 消費者がお肉220円(消費税20円)を購入
- 代金220円(消費税20円)を受け取る
- 仕入れ先が免税事業者だったため、仕入れにかかった消費税10円を控除できない
- 売上の消費税20円を納付しないといけない
今まであれば、仕入れ先が免税事業者であれば、仕入税額控除といって、上記の例である10円を差し引きできていました。
つまり支払う消費税は10円でよかったわけです。
しかしインボイス制度が始まれば、20円の納付となります。
取引先が免税事業者でないのなら、支払う料金に違いが出てくるため、課税事業者は取引を考え直す必要が出てくるでしょう。
これがインボイス制度の大きな問題です。
インボイス制度で重要となる「適格請求書」
インボイス制度で注目するべきは、適格請求書です。
適格請求書とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項 が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。
出典:国税庁 インボイス制度の概要『A4縦型・両面2面リーフレット』より
これが発行できる事業者との取引は、上記のような仕入税額控除のような、今までどおりの消費税の計算ができるようになります。
ただし、全ての事業者が適格請求書を発行できるわけではありません。
じつは適格請求書には、以下のような項目が必須になっており、課税事業者でないと記述できない造りになっています。
適格請求書に必要な項目
- インボイス制度の登録番号
- 適用税率
- 消費税等の額
上記の最初にかかれっている「インボイス制度の登録番号」は、登録申請しないと利用できません。
免税事業者では、この適格請求書が作れないため、事業間取引で困ってしまうわけです。
インボイス制度によるフリーランス・業務委託美容師への影響は?
では、美容師で置き換えると、インボイス制度はどのような影響が出るのか、見てみましょう。
ここで問題となるのは、以下の2つのパターンです。
- フリーランス美容師
- 業務委託で仕事をもらう美容師
どちらも事業者間の取引となるため、インボイス制度の影響を大きく受けてしまいます。
「適格請求書発行事業者」として登録する場合の影響
美容師が、「適格請求書発行事業者」に登録した場合、どのような影響が出るのでしょうか?
そもそも適格請求書発行事業者になるには、課税事業者になる必要があります。
売上が年間で1,000万円以下の美容師だった場合の話です。
課税事業者になった場合、売上が少なくても、お客様から受け取った売上から消費税を納付しないといけません。
例えば年間の売上が550万円だった場合、50万円は税務署に納付する必要があります。
また、請求書を作成する手間がかかるため、収入が減るのと同時に、余計な時間が削られるのも大きな痛手です。
「適格請求書発行事業者」として登録しない場合の影響
適格請求書発行事業者になると、デメリットが増えるため、美容師の中には登録しない人も出てくるでしょう。
この場合は、どのような影響が出るのでしょうか?
まず、適格請求書発行事業者にならない場合、美容室側の負担が増えます。
適格請求書が発行できないと、美容室経営者は、フリーランスや業務委託で仕事をする美容師に支払った報酬分の消費税を控除できません。
今まで以上の出費となってしまうので、おそらく美容師に交渉してくるでしょう。
適格請求書発行事業者にならないのなら、仕事をもらえない可能性もゼロではありません。
適格請求書発行事業者になった美容師を探したほうが、長期で見たらお得だからです。
そんなリスクを考えたら、適格請求書発行事業者になったほうがいいと考える美容師もいるでしょう。
そんなリスクを考えないといけないので、インボイス制度が注目されているわけですね。
インボイス制度に向けてフリーランス・業務委託美容師が準備しておくこと
インボイス制度が始まる前までに、フリーランスや業務委託で仕事をする美容師は、準備するべきことがあります。
- 仕事をもらっている美容室に相談
- 適格請求書発行事業者になる必要があるなら必要書類を用意
- インボイス制度が始まる前までに税務署へ提出
最初に美容室の経営者と、適格請求書発行事業者になる必要があるのか聞いてみましょう。
収益より美容師を大事にしてくれる経営者なら、美容室側で消費税を負担してくれるかもしれません。
しかし、それを前提に動こうとするのは流石に理想論に頼りすぎかもしれません。
現在では、景気がよくないため、そんな美容室は多くないでしょう。
そのため、相談しても多くの場合は、適格請求書発行事業者になってほしいと言われるはずです。
その時は、免税事業者であっても、課税事業者になる必要があります。
税務署に行って、適格請求書発行事業者の登録申請書をもらいましょう。
これを税務署に提出すれば、美容室側の負担が少なくなり、そのまま仕事が継続してもらえるはずです。
インボイス制度による業務委託美容室への影響は?
インボイス制度は、美容師だけが影響を受けるわけではありません。
業務委託で経営をしている美容室にとっても、かなり悩ましい制度なので、そのあたりも知っておきましょう。
美容師に「適格請求書発行事業者」として登録してもらう場合の影響
美容室側にとっては、美容師が適格請求書発行事業者になってもらったほうが、負担が少なくて済みます。
しかし、登録をしてもらったとしても、影響がゼロになるわけではありません。
美容師への負担が大きくなるため、長く働いてもらうためにも、報酬を高くするなどの工夫が必要になってきます。
- 報酬をアップした場合⇒経費の負担が大きくなる
- 報酬をアップしない場合⇒負担はないが、別で気を遣う必要がある
このように、適格請求書発行事業者として登録してもらったとしても、影響が出てきます。
お金を生みだしているのは、仕事をしている美容師です。
長い付き合いを想定しているのなら、適格請求書発行事業者になった後でも、何かしらの配慮は必要ですね。
美容師が免税事業者のままの場合の影響
逆に、相談した上で免税事業者のままで働くと言われた時、美容室経営者としては、インボイス制度の影響をかなり受けます。
- 控除されない消費税をそのまま払い続ける⇒負担が増える
- 控除されない金額分を報酬から差し引く⇒美容師の負担が増える
免税事業者である美容師と取引を続けるなら、控除されない消費税を払い続けないといけません。
ただでさえ支払う消費税が多いのに、上乗せされた金額を納付するのは大変です。
それなら、控除されない金額を、報酬から差し引けばいいと思う人も出てくるでしょう。
確かに表面上は痛くありませんが、美容師の負担が大きくなり、別の仕事先を探してしまうかもしれません。
どちらにしても、長く付き合っていきたいのなら、美容師の気遣いは必要になるわけですね。
インボイス制度に向けて業務委託美容室が準備しておくこと
美容室側がインボイス制度のために準備するべき内容は、フリーランスや業務委託で仕事をする美容師への相談です。
- 適格請求書発行事業者になるかどうか
- 登録後の報酬の相談
- 登録しない時の対処
など
早めに行動しておいて損はありません。
長く今働く美容師と付き合っていきたいのなら、先行投資だと思って報酬を増やすなど、対処しておきましょう。
それでも美容室の経営に負担がかかるもの。
納得して仕事ができるのか、バランスのいい条件が見つかるように模索してみてください。
インボイス制度は美容室も美容師も影響がかなり大きくなるのは絶対
インボイス制度は、免税事業者だった美容師が、特に影響を受ける制度です。
今まで通りの働き方では、おそらくできなくなってしまうでしょう。
お互いが早めに相談をして条件を決めておくと、実際にインボイス制度が始まっても、負担が少なくて済みます。
それでもどちらも負担が増えてしまうので、生活に支障がない範囲で仕事ができるように、意識して早めに対策をしておきましょう。
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